訪日インバウンド市場が本格的な回復を遂げる中、アジアからの観光客誘致は国内の観光事業者にとって欠かせないテーマとなっています。しかし、いざ外国人向けのPRを始めようとしても、何から手をつければいいのかわからないと悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。
現在、スマートフォンの普及により、旅行者の情報収集の主戦場は各種SNSへと完全に移行しています。SNSでの観光プロモーションは、これからのインバウンド戦略において避けては通れない重要な柱です。
本記事では、商業施設や宿泊施設、体験型コンテンツを提供する事業者に向けて、外国人 フォロワー 増やし方から外国人 インフルエンサー 選び方まで、実務に直結するノウハウを徹底解説します。
専門的な知識がなくても、明日からすぐに行動に移せる具体的なステップをご紹介します。まずは現状を正しく理解し、自社に最適なプロモーションの第一歩を踏み出しましょう。
実際の運用で成果を上げたい方は、観光業のInstagram多言語運用の成功事例と海外向け投稿の運用体制もあわせてご覧ください。
1 アジア向けSNS観光プロモーションの現状と重要性

1-1 アジア圏からの訪日客とSNSの利用状況
訪日外国人の多くはアジア地域からの旅行者であり、その旅行行動にSNSが大きな影響を及ぼしています。観光庁の「インバウンド消費動向調査(2024年)」によれば、旅行前に役立つ情報源としてSNSを挙げる人が非常に多く見られます。
特に台湾、韓国、香港といった東アジアの市場においてその傾向が顕著で、彼らはマスメディアよりもリアルな体験が投稿されるSNSをより信頼する傾向があります。したがって、アジア向けにSNSを通じて観光情報を発信することは、潜在的な顧客層に直接アプローチする最適な方法といえます。
1-2 観光プロモーションにおけるSNSの重要性
SNSは単なる情報発信の手段にとどまらず、旅行者との双方向コミュニケーションを可能にする強力なプラットフォームです。共感を生み出し、それが拡散されることで一気に認知度を高める力を持っており、写真や動画コンテンツと特に相性が良い特徴があります。
さらに、SNSは旅行前の情報収集だけでなく、旅行中の目的地変更や出発後の思い出共有など、カスタマージャーニー全体を通して利用されます。自社のサービスや施設がSNS上でどのように評価されているかを把握し、好意的な口コミを育てる仕組みを構築することが不可欠です。
1-3 なぜ自社によるSNS運用・プロモーションが不可欠なのか
「自分たちのような規模の施設がアカウントを運用しても意味がないのでは」と考える方もいるかもしれません。しかし、インバウンド市場では知名度の高い施設だけが選ばれるわけではありません。個性的な体験や深い魅力を求めて訪日する人々が増加しています。
外部のポータルサイトやオンライン旅行会社に依存するだけでなく、自社で情報発信を行うことは、中長期的な観光客獲得にかかるコスト削減にもつながります。また、公式アカウントを通じて正確な情報を届け、問い合わせに直接対応することで、外国人旅行者に強い信頼感と安心感を提供できます。
2 外国人フォロワーの増やし方:基礎編
2-1 ターゲット国ごとに主要なSNSを把握する
外国人フォロワーを増やすためにまず取り組むべきは、狙いたい国や地域でどのSNSが主流かを理解することです。台湾や香港では特定のグローバルプラットフォームの利用率が高く、これらが情報収集の主要手段となっています。
一方で、韓国では独自のブログサービスが根強い人気を持ち、中国でも独自のアプリが圧倒的なシェアを占めています。「令和5年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査(総務省, 2024年)」と比較してみても、海外のSNS環境は大きく異なるため、自社の状況に応じた選択が不可欠です。
2-2 プロフィール設定と多言語対応のポイント
アカウントを開設したら、まずプロフィールをしっかりと整えましょう。外国人ユーザーがアカウントに訪れた際、最初の数秒で役立つ情報があるかどうかを判断します。施設名や所在地、営業時間、予約サイトへのリンクなどを英語などで簡潔に記載することが重要です。
投稿内容の多言語対応に関しては、全言語を網羅する必要はありません。英語を基軸にしつつ、ターゲットとなる国の言語を部分的に取り入れるのが現実的です。翻訳ツールを使う場合は、不自然な表現を避けるため、ネイティブスピーカーにチェックしてもらうのをおすすめします。
2-3 魅力的なビジュアルコンテンツの作り方
言葉の壁を超えて直感的に魅力を伝えるには、写真や動画などのビジュアルコンテンツの質が非常に重要です。美しい景色や食欲をそそる料理、楽しそうな体験の様子など、ユーザーが「ここに行ってみたい」と思える素材を意識して撮影しましょう。
必ずしもプロのカメラマンに依頼する必要はなく、スマートフォンでも充分に魅力的なコンテンツを作成可能です。自然光を利用したり、撮影角度を工夫したりするだけでも写真の印象は格段に良くなります。スタッフの笑顔など、人の温かみを感じさせる素材を加えるのも効果的です。
2-4 ハッシュタグと位置情報の効果的な活用法
SNS上で新たなユーザーにアカウントを見つけてもらうためには、ハッシュタグと位置情報の活用が欠かせません。外国人旅行者が検索しそうなキーワードを予測し、適切なハッシュタグを投稿に含めましょう。ターゲットの言語での検索トレンドの調査も効果的です。
加えて、投稿には必ず自社の位置情報を設定してください。旅行者は訪れる地域について、地図アプリや位置情報検索を活用して周囲のスポットを探す傾向が高いためです。位置情報を登録しておくことで、ユーザーが実際に訪れた際にチェックインしやすくなります。
3 外国人フォロワーの増やし方:実践編

3-1 継続的な発信と運用体制の整備
運用で最も困難なのは継続することです。最初から完璧を目指して投稿のハードルを高く設定すると、担当者の負担が増大し、途中で更新が途絶えてしまうことがよくあります。無理のない範囲で、週に数回程度の投稿頻度を目標に定め、発信を習慣化することが重要です。
業務の合間に投稿作業をこなすのが難しい場合は、前もって数日分のコンテンツを準備し、予約投稿ツールを活用するのも有効な手段です。自社の直接的な宣伝だけでなく、周辺地域の観光情報など旅行者に役立つ内容を交えることで、アカウントの魅力を高めることができます。
3-2 ユーザーとの対話を通じてファン化を促進する
フォロワーを増やすには、情報発信だけでなくユーザーとの積極的なコミュニケーションが不可欠です。投稿へのコメントやダイレクトメッセージでの問い合わせには、迅速かつ丁寧に応じるよう心がけましょう。翻訳ツールを利用して誠実に返答する姿勢は相手に好印象を与えます。
自社に関連するハッシュタグで検索し、訪れてくれたユーザーの投稿を見つけたら、いいねを押したり感謝のコメントを残したりするアクションも効果的です。このような小さなやりとりの積み重ねが特別なつながりを生み出し、再訪や好意的な口コミの拡散へとつながっていきます。
3-3 オフライン(店舗・施設)からSNSへの誘導
外国人フォロワーを増やすうえで絶対に見逃せないのが、実際の店舗や施設といったオフラインの場からの誘導です。すでに現地に訪れているお客様は、最も可能性の高い見込みフォロワーと言えます。彼らにアカウントの存在を知らせる仕組みを現場に用意しましょう。
レジ横や客室などにQRコードを含むポップアップを設置し、「フォローして最新情報をチェック」といったメッセージを多言語で掲示する方法が効果的です。無料Wi-Fiの接続画面にリンクを表示させるなどの工夫も非常に有効です。また、現場スタッフから直接案内することも重要なポイントとなります。
4 外国人インフルエンサーの選び方と活用法
4-1 インフルエンサーマーケティングの基本
自社アカウントの運用だけではリーチできる層に限界がある場合、外国人インフルエンサーの選び方を正確に理解し、彼らの発信力を活用することが非常に効果的です。特定の国で影響力を持つ人物にサービスを体験してもらい、その魅力を彼ら自身の言葉で伝えてもらう手法を指します。
アジア圏では、インフルエンサーの推薦が購買行動や旅行先の決定に大きく影響する傾向があります。彼らは独自の視点と表現力を持ち、企業の公式発信よりも親しみやすくリアルな声として受け入れられます。適任者を起用すれば、認知度を一気に向上させることが可能です。
4-2 自社に合ったインフルエンサーの選び方
インフルエンサーを起用する際に最も重要なのは、その人物のフォロワー層が自社のターゲット層と合致しているかどうかです。例えば、高級な伝統体験をPRしたい場合に、若年層向けの手頃な旅行をテーマに発信しているインフルエンサーへ依頼しても、期待した効果は得にくいでしょう。
候補者の過去投稿やフォロワーのコメントの傾向をしっかり分析し、どのジャンルで発信して支持を集めているかを見極めることが、失敗しない外国人インフルエンサーの選び方の基本です。ミスマッチを防ぐ上で欠かせない重要な段階となります。
4-3 フォロワー数だけで判断しない見極めポイント
インフルエンサー選定時には、どうしても分かりやすい指標であるフォロワー数に注目しがちです。しかし、フォロワー数が多くても投稿に対するエンゲージメント率が低ければ注意が必要です。エンゲージメント率の高さは、フォロワーがその発信内容に強く共感していることの証明です。
数万人規模のフォロワーを持っていても、特定のテーマに特化しフォロワーとの結びつきが強い人物のほうが、結果的に高いPR効果を発揮することが多いです。不正アカウントを見抜くためにも、急激なフォロワー数の増減がないかのチェックが重要となります。
4-4 依頼から実施までの具体的な進め方
起用したいインフルエンサーが決まったら、まずは連絡を取って依頼を進めます。直接コンタクトを取る方法もありますが、言語や商習慣の違いによるトラブルを避けるために、最初は専門のキャスティング代理店を通すことを推奨します。提供可能な体験内容や報酬条件などを明確に伝え、合意を得ましょう。
実施にあたっては、インフルエンサーに自由な表現を任せることが大切です。企業側が投稿内容を細かく指定しすぎると、自然なトーンが失われて不自然な宣伝と受け取られやすくなります。最終的なクリエイティブは彼らの感性を尊重することで、共感を呼ぶプロモーションに繋がります。
5 アジアSNSプロモーションの失敗例と対策

5-1 ターゲット像のズレによるエンゲージメントの低下
アジアのSNSを活用した観光プロモーションを実施しても、期待していた成果が得られないケースの多くはターゲット設定の誤りに起因します。アジア全域といったあまりにも広範囲なターゲットを設定すると、発信するメッセージがぼやけてしまい、誰の心にも響かないコンテンツとなりがちです。
例えば、タイの旅行者はフォトジェニックな景観を好む一方で、台湾の旅行者は日本の歴史や地元グルメに強い興味を持つなど、嗜好は国によって大きく異なります。JNTOが公開する「日本の観光統計データ」などの統計資料を活用し、近隣のエリアに訪れる旅行者の国別傾向をしっかり分析することが肝要です。
5-2 炎上や文化の違いに起因するトラブル回避
国境を越えて情報発信を行う際、文化や宗教、政治的背景の相違によって生じるトラブルには十分な注意が求められます。日本国内では問題とならない表現でも、特定の国の人々にとっては不快感を与えたり、禁忌に触れたりするリスクがあるため、事前の入念なリサーチが欠かせません。
また、翻訳ミスにより誤解が生じるケースもよく見られます。機械翻訳だけに頼るのではなく、重要な告知やメッセージは、その国の文化に詳しい担当者や専門業者にチェックしてもらう体制を整えましょう。批判的なコメントが寄せられた際には、冷静に対応するためのルールを共有しておくことも重要です。
5-3 ステルスマーケティング規制への対応とその注意点
PR活動を依頼する際に、必ず守らなければならないのがステルスマーケティング規制への対応です。広告であることを隠し、好意的な口コミのように見せかけて情報を発信する行為は、多くの国で消費者を欺くものとして厳しく規制されています。日本国内でも「広告である」と明示することが義務化されているため注意が必要です。
海外向けのプロモーションであっても、対象国の法律や各プラットフォームの規定を遵守する必要があります。依頼先には、投稿内に必ず「PR」である旨のタグを付けるよう、契約時点で明確に指示し、合意を得ておくことが不可欠です。
6 成果を最大化するための次のステップ
6-1 定期的な効果測定と改善のサイクル構築
運用や施策は実施して終わりではありません。発信した情報がどれほど多くの人に届き、どのような反応を得られたのかを定期的に振り返り、その結果をもとに改善を図ることが重要です。各プラットフォームが備える分析機能を活用し、リーチ数やフォロワーの属性などを定期的にチェックする習慣を身につけましょう。
投稿の反応が良い時間帯に関するデータを蓄積することで、今後の施策の精度向上につながります。また、外部に依頼した場合は、実施前後の自社アカウントへのアクセス増加や、予約数の変動を追跡し、費用対効果をしっかりと検証することが求められます。
6-2 予算に合わせた段階的戦略の展開
はじめから大規模な広告費を投入して大々的なプロモーションを行う必要はありません。限られた予算内で、まずは自社アカウントの基盤を築くことに注力し、小規模なスタートを切ることが成功への近道です。無料で利用可能な基本機能を最大限活用し、地道にファンを増やしていくことで、費用を抑えながら成果を上げることが可能です。
運用に慣れ、一定の成果が見え始めた段階で、少額の広告配信やインフルエンサーの起用など、予算を段階的に増やしていくのが望ましいです。加えて、自治体や地域の観光法人が主催する事業に参加する形で、相乗効果を図るのも有効な選択肢となります。
6-3 専門家および外部パートナーとの協力体制
自社だけで多言語対応や最新のトレンド把握を継続するのは、担当者に大きな負担を強いることになります。必要に応じて、インバウンド市場の専門知識がある外部パートナーとの連携を検討してください。彼らはターゲット国ごとに効果的なアプローチ方法を熟知しています。
外注するだけでなく、自社の課題を共有し、パートナーとともに戦略を練る関係性を築くことが重要です。観光庁が発信している最新のインバウンドデータや支援策を積極的に活用し、外部の知見を柔軟に取り入れながら、持続的な集客体制を構築していきましょう。
情報源:
観光庁/訪日外国人消費動向調査(2024年) 総務省/令和5年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査(2024年) 日本政府観光局(JNTO)/日本の観光統計データ