「円安を追い風に、訪日外国人観光客が急増している」。そんなニュースを耳にするたび、自社のサービスや商品を海外の人にも届けたい、と考える事業者様は多いのではないでしょうか。しかし、いざインバウンド集客に取り組もうとしても、「何から手をつければいいのか分からない」「外国語もできないし、決済はどうすれば?」といった不安から、最初の一歩を踏み出せずにいるケースも少なくありません。本記事は、まさにそのようなお悩みを持つ、宿泊施設、体験事業者、小売店の皆様に向けた実践的なガイドです。この記事を読めば、インバウンド集客の強力な武器となる「インバウンド OTA」の基本から、自社に合ったサービスの選び方、具体的な登録・運用方法までが明確に分かります。専門知識は不要です。一緒に、世界中のお客様をお迎えするための扉を開きましょう。
また、インバウンド集客を成功させるためには、効果的なインバウンド広告戦略を理解し、オフラインでの成果を適切に計測することも重要です。
1. なぜ今、インバウンド集客にOTAが不可欠なのか?

インバウンド集客を成功させるうえで、OTA(オンライン旅行代理店)の活用は避けて通れない戦略となっています。では、なぜこれほどまでにOTAが重要視されているのでしょうか。その背景には、旅行者の行動パターンが大きく変化していることが挙げられます。まずはOTAの基本的な役割と、インバウンド市場におけるその重要性について理解を深めていきましょう。
1-1. OTAとは?旅行業界における役割
OTAは「Online Travel Agent」の略で、インターネットを通じてのみ旅行商品の取り扱いを行う旅行会社のことを指します。実店舗を持たず、ウェブサイトやスマートフォンアプリで宿泊施設、航空券、ツアー、アクティビティなどの予約サービスを提供しているのが特徴です。Booking.comやExpedia、楽天トラベルといったサービス名を耳にしたことがある方も多いでしょう。これらは代表的なOTAの例です。
従来、旅行代理店は店舗のカウンターで対面販売を行っていましたが、OTAは24時間365日、世界中のどこからでもアクセス可能である点が最大の強みです。利用者はPCやスマホ一つで多彩な選択肢を簡単に比較検討でき、予約から決済までをスムーズに完結できます。事業者にとっても、OTAは自社商品を世界中の潜在顧客に届ける巨大なオンラインショップと言えるでしょう。
1-2. 訪日外国人旅行者の情報収集と予約行動の変遷
インバウンド市場でOTAの重要性が増している背景には、訪日外国人旅行者の旅行スタイルが大きく変化したことがあります。以前主流だった団体ツアーは減少し、現在は個人が自由に旅程を組み立てる「個人旅行(FIT:Foreign Independent Tour/Traveler)」が多数派です。彼らは旅行の計画段階でOTAを活用し、情報収集や比較を進めています。
日本政府観光局(JNTO)の調査によると、多くの訪日客が旅行前にウェブサイトやSNSで情報を集め、予約も事前に済ませています。特に欧米豪の旅行者は、出発前に宿泊や主要なアクティビティの予約を完了させる傾向が顕著で、その際に利用されているのがOTAなのです。このことから、自社商品をOTAに掲載するのは、彼らの「旅行先の候補」として認知されるための重要な第一歩となり、インバウンド集客において欠かせない意味を持ちます。
1-3. OTA活用による3つの大きなメリット
インバウンドでOTAを活用することで、事業者には多くのメリットがあります。特に限られたリソースの中で運営する中小事業者にとって、その恩恵は大きいと言えるでしょう。ここでは代表的な3つの利点を挙げます。
まず一つ目は、「世界中の潜在顧客にリーチできる」ことです。自社のウェブサイトだけでは届きづらい、または膨大な広告費が必要な遠隔の国や地域の人々にも、OTAを活用することで効率的にアプローチが可能です。多言語対応の世界的なOTAであれば、言語の壁を乗り越え商品の魅力を伝えられます。
二つ目は、「多言語対応や決済面の負担が大幅に軽減される」ことです。外国人観光客からの問い合わせ対応や、さまざまな決済方法への対応は多くの事業者にとって大きな負担ですが、OTAは予約管理や顧客とのコミュニケーションを多言語でサポートし、決済も代理で行ってくれます。これにより、事業者はサービス向上に専念できるようになります。
三つ目は、「プロモーションやデータ分析機能の活用が可能」な点です。多数のOTAは、特定国やシーズンに応じたセールへの参加や広告露出の強化といったプロモーションサービスを提供しています。また、どの地域からの予約が多いか、どのような顧客層が多いかなど、重要なデータ分析も行えるため、これらを活用して戦略的なインバウンドマーケティングを展開することができます。
2.【タイプ別】インバウンドに強い主要OTAの特徴と比較
「インバウンド OTA」と一口に言っても、その種類は多様です。各OTAは得意とする地域や顧客層、手数料の仕組みが異なるため、自社のターゲット市場や商品特性に適したOTAを選ぶことが成功のカギとなります。本稿では、宿泊、体験、特定地域に強みを持つOTAをタイプ別に分類し、それぞれの特徴を比較しながら詳しく解説します。
2-1. 宿泊施設向けOTA
ホテル、旅館、ゲストハウスなどの宿泊事業者にとって、OTAは重要な販売チャネルの一つです。ここでは、世界的に知名度が高く、インバウンド集客に不可欠な代表的な4つのOTAをご紹介します。
2-1-1. Booking.com(ブッキングドットコム)
オランダ発のBooking.comは、世界最大級の宿泊予約サイトであり、インバウンド集客の基本とも言えるOTAです。掲載施設数が非常に多く、ホテルはもちろんアパートメントや旅館、B&Bなど様々な宿泊形態をカバーしています。特にヨーロッパ圏での知名度と影響力が絶大で、欧米からの訪日客を取り込みたい事業者には必須のプラットフォームといえるでしょう。
手数料は12%から15%程度ですが、掲載順位を上げるためのプログラムに参加すると変動する場合があります。管理画面が使いやすく、24時間対応の日本語サポートも充実しているため、OTA導入初心者でも安心して利用できる点も魅力です。幅広い国籍や年齢層のユーザーが利用しており、多くの宿泊施設にとって初めての登録先として最適です。
2-1-2. Agoda(アゴダ)
シンガポールに本社を置くAgodaは、特にアジア太平洋地域において強力なシェアを持つOTAです。Booking.comと同じBooking Holdingsのグループに属し、連携も密ですが、Agodaは特にアジア圏からの旅行者に対して強みを発揮し、独自のセールや割引クーポンを頻繁に発行して価格重視のユーザー層に支持されています。
東南アジアや東アジアからのインバウンド客を主要ターゲットにする場合、Agodaへの掲載は非常に効果的です。手数料はBooking.comと同程度ですが、「Agodaが集金し、施設へ後日支払う」というキャッシュフローを考慮した支払いモデルも用意されています。アジア市場の動向を掴む上でも欠かせないOTAと言えます。
2-1-3. Expedia(エクスペディア)
アメリカを拠点とするExpediaは、航空券と宿泊を組み合わせたパッケージ予約に強みを持つOTAです。同じグループにHotels.comやTrivagoなどを抱え、特に北米市場で高い影響力を持っています。航空券を予約した利用者に対して宿泊を提案するクロスセルが得意で、旅行プランを一括でまとめて予約したいユーザーに多く利用されています。
手数料は15%から18%ですが、パッケージ予約を介した送客が多いため、予約成立が比較的早い傾向があります。アメリカやカナダからの訪日客を狙いたい施設や、空港アクセスの良い立地の宿泊施設はExpediaを活用することで大きな成果が期待できます。
2-1-4. Airbnb(エアビーアンドビー)
「民泊」プラットフォームとして知られるAirbnbは、今やブティックホテルや旅館、ユニークな体験を提供するB&Bなど、多彩な宿泊施設を掲載しています。一般的なホテルとは異なる、「その土地ならではの特別な滞在」を求める旅行者に強く支持されています。
以前はホスト3%・ゲスト15%前後の「分割手数料」が主流でしたが、2026年現在はホストが手数料の全額(15.5%)を負担する「シンプル価格設定(全額ホスト負担モデル)」が標準となっています。
ゲスト側のサービス料が0円と表示されるため、旅行者にとっては「隠れた費用がない」という安心感につながり、検索結果での成約率が向上する傾向にあります。体験重視のミレニアル世代やZ世代、さらに暮らすように旅をする欧米からの長期滞在者をターゲットにする場合、競合となるホテル等と価格比較がされやすいAirbnbは、非常に強力な販売チャネルとなります。
2-2. 体験・アクティビティ専門OTA
インバウンド市場では、モノ消費からコト消費へと明確なシフトが進んでいます。着物体験、料理教室、ガイド付きツアーなど、多様な「体験」は訪日旅行者の満足度を左右する重要なポイントです。ここでは、体験商品に特化した代表的なOTAをご紹介します。
2-2-1. Klook(クルック)
香港を拠点とするKlookは、アジアのミレニアル世代やZ世代を中心に爆発的な人気を博している体験予約プラットフォームです。テーマパーク入場券や鉄道パスなどの交通チケットの取り扱いに強みを持ち、スマホアプリでの手軽な予約・利用体験を重視しています。東アジアや東南アジアの若年層集客を狙う事業者にとっては、優先的に検討すべきOTAです。
手数料は商品によって異なりますが、概ね15%から25%の範囲です。やや高めの販売手数料ですが、その分、巨大なアジア市場の若者に直接リーチできるマーケティングパワーが魅力的です。トレンドに敏感な若年層向けアクティビティを展開する企業に最適といえます。
2-2-2. GetYourGuide(ゲットユアガイド)
ドイツ・ベルリン発のGetYourGuideは、ヨーロッパや北米の旅行者に強く支持されている体験予約OTAです。質の高いガイド付きツアーや美術館の優先入場券など、文化的で学びにつながる体験を豊富に提供しています。Klookがアジアの若者向けならば、GetYourGuideは欧米の知的好奇心旺盛な大人向けと位置づけられます。
掲載に際しては商品の品質や独自性に関する審査が厳しいですが、その分、掲載されれば高い信頼を勝ち得ます。手数料は原則25%とされています。歴史や文化を深く掘り下げるツアーなど、付加価値の高い体験を持つ事業者におすすめのOTAです。
2-2-3. Viator(ビアター)
Viatorは、世界最大の旅行口コミサイト「TripAdvisor(トリップアドバイザー)」の傘下にある体験予約OTAで、世界各地の多様な商品を網羅し、業界最大級の掲載数を誇ります。TripAdvisorのサイト上でもViatorの商品が紹介されるため、幅広い層の旅行者にリーチできるのが強みです。
特定の市場に限定せず、グローバルな多国籍旅行者にアプローチしたい場合に効果的な選択肢です。手数料は20%から25%で、多ジャンルのアクティビティを受け入れています。まずは幅広く商品を展開し、どの国からの需要があるか見極めたい事業者にも適しています。
2-3. 中華圏に特化したOTA
巨大な市場規模を誇る中国からの旅行者は、依然としてインバウンド市場の重要な顧客層です。彼らは欧米系OTAではなく、自国で慣れ親しんだサービスを主に利用しています。ここでは、中華圏攻略に欠かせない代表的な2つのOTAを紹介します。
2-3-1. Trip.com / Ctrip(トリップドットコム / シートリップ)
Trip.com Groupは、中国のオンライン旅行市場で圧倒的なシェアを持つ最大手企業です。中国国内向けは「Ctrip(携程)」、グローバル向けは「Trip.com」のブランド名で展開し、航空券や宿泊、鉄道、体験まであらゆる旅行商品をワンストップで提供しています。中国人旅行者にとって非常に信頼されるプラットフォームの一つです。
中国本土からの集客を本格化させたい場合、Trip.comへの掲載は不可欠です。手数料は通常15%で、他のグローバル大手OTAと同等と考えられます。団体旅行や企業のインセンティブツアーを多く取り扱うため、まとまった送客が期待できる場合もあります。
2-3-2. Fliggy(フリギー)
Fliggy(飛猪)はEコマース最大手アリババグループが運営する旅行プラットフォームです。アリババの決済サービス「Alipay(アリペイ)」との連携が強く、特に中国のデジタルネイティブな若者に人気があります。ライブコマースを利用したプロモーションなど、エンターテインメント性の高い販売手法も特徴です。
Fliggyユーザーは新しい体験や個性的な商品に関心が高く、SNS映えするトレンドを取り入れたサービスを提供する事業者にとって魅力的な市場となります。アリババ経済圏の巨大ユーザーベースにアクセスできる点が最大の強みです。
3. OTA導入の前に!必ず押さえるべき準備と注意点

自社に適したインバウンド向けOTAが見つかったとしても、すぐに登録作業に取りかかりたくなるかもしれません。しかし、その前に必ず準備しておくべきことがあります。この準備を怠ると、せっかくOTAに登録しても思うような成果が得られなかったり、運用開始後に予期しないトラブルに直面したりするリスクがあります。ここでは、OTA導入を成功させるための3つの重要な準備ポイントについてご説明します。
3-1. 自社の強みとターゲット顧客を明確にする
最も大切な準備は、「自社の商品がどの国の、どのような顧客層に対してどんな価値を提供できるのか」を改めて明確にすることです。たとえば、歴史ある温泉旅館を経営している場合、ターゲットは「日本の伝統文化や静寂を求める欧米の成熟したカップル」である可能性があります。一方で、最新のアニメグッズを扱う小売店であれば、「ポップカルチャーに熱中するアジアの若者グループ」が対象になるでしょう。
ターゲット顧客を具体的にイメージすることで、適切なOTAの選定が自然と見えてきます。欧米からの旅行者を狙うならBooking.comやGetYourGuide、アジアの若者向けであればAgodaやKlookが有力な選択肢です。また、ターゲットに響くメッセージを練る際にも、この作業は欠かせません。自社の強みを客観的に分析し、それをどのような顧客に届けたいか言葉にしておきましょう。
3-2. 魅力的な商品情報の作成
OTAを通じて商品をオンライン販売する際、顧客が予約を決定する主な判断材料は写真と説明文、そして価格の3つです。これらのクオリティによって競合との差別化が可能となり、予約率に大きな影響を及ぼします。登録する前に、質の高い商品情報をしっかり整えておくことが成功への鍵となります。
とりわけ写真は非常に重要です。スマートフォンでも十分に撮影できますが、余裕があればプロのカメラマンに依頼するのが望ましいでしょう。施設の清潔感や商品の魅力が伝わるよう、明るい環境で様々な角度から複数枚撮影してください。訪日客にとっては、日本独特の雰囲気や細やかなサービスが感じられる写真が特に好まれます。
説明文は、ターゲット顧客が知りたい情報を盛り込み、その場を訪れたくなるような魅力的なストーリーを添えることが肝心です。機械翻訳も便利ですが、不自然な表現は信頼を損ねる恐れがあります。可能ならば、ターゲット国の母語話者にチェックしてもらうと安心です。また、価格設定はOTAの手数料(通常10%から25%程度)を踏まえ、競合価格と比較しながら慎重に決定しましょう。
3-3. インバウンド受け入れ体制の整備
OTA経由で予約が入った後、実際にお客様を迎える体制が整っていなければ、満足度の向上は期待できません。むしろ、悪い口コミが広がるリスクを招くことにもなります。予約を受ける前に、最低限の受け入れ体制を構築しておくことが大切です。
観光庁も訪日外国人旅行者の受入環境整備を推進しており、事業者がすぐに取り組める対策も多数あります。
まずは多言語対応の準備です。スタッフ全員が外国語を話せる必要はなく、スマートフォンの翻訳アプリや、よくある質問をまとめた指差し会話シートがあれば、コミュニケーションは大幅に円滑になります。次に決済手段の拡充です。クレジットカードに加え、特にアジア圏で普及しているAlipayやWeChat PayといったQRコード決済にも対応すれば、お客様の利便性が格段に高まります。
さらに、今や必須インフラといえるのが無料Wi-Fiの整備です。訪日客の多くは、地図アプリで次の行き先を調べたり、SNSで旅の思い出を共有したりするためにインターネット接続を常に求めています。施設内で無料Wi-Fiが利用できることは、大きな魅力ポイントとなります。これらの準備を事前に整えておくことで、自信をもって海外からのお客様をお迎えできるでしょう。
4. 実践!OTA登録から運用開始までの5ステップ
準備が整ったら、いよいよOTAへの登録と運用開始に移ります。本章では、具体的な流れを5段階に分けて説明します。各段階を確実に踏むことで、スムーズにインバウンド集客をスタートさせることが可能です。初めての方でも理解できるよう、一つひとつの手順を丁寧に解説します。
4-1. ステップ1:OTAの選定と比較検討
まずは、これまで集めた情報をもとに、自社の事業に最も適したインバウンドOTAを2〜3社に絞り込みます。必ずしも1社に絞る必要はなく、異なるターゲット層を持つ複数のOTAを使い分けることで、より広範囲の顧客層へアプローチできます。この段階では、各OTAの公式サイトにある事業者向けページを詳細に確認し、手数料、契約条件、サポート体制などを改めて比較検討しましょう。
特に注意して確認すべきは、手数料の計算方法や支払いサイクルです。例えば、手数料が予約の総額に対してかかるのか税抜価格ベースなのか、また売上の入金が月単位なのか週単位なのかによって資金繰りに差が出ます。さらに、管理画面のデモがあれば、操作性が直感的かどうかもチェックしておくことをおすすめします。不明点があれば、登録前に問い合わせフォームなどで質問しておくと安心です。
4-2. ステップ2:事業者登録と契約
利用するOTAを決定したら、各サービスの公式サイトから事業者登録(サインアップ)を行います。一般的には、会社名や住所、担当者の連絡先など基本情報の入力から始まります。続いて、事業の種類に応じて、旅館業営業許可証や会社の登記簿謄本などの証明書類を提出する場合があるため、事前にデジタルデータで用意しておくとスムーズに進みます。
登録手続きが進むと、契約書の内容を確認し同意する必要があります。ここには、手数料率、キャンセルポリシー、支払い条件、禁止事項などが詳細に記載されているため、必ず隅々まで目を通し、理解したうえで同意してください。特にキャンセル時の費用負担やトラブル発生時の責任範囲については、慎重に確認しておくことが肝心です。
4-3. ステップ3:商品・施設情報の登録
契約が完了すると、事業者専用の管理画面にアクセス可能になります。次の作業は、あらかじめ準備しておいた写真や説明文を使い、自社の商品や施設の情報を登録していくことです。OTAの案内に従い、施設の基本情報、客室やツアーの種類、アメニティやサービス内容、そして最重要の写真をアップロードしていきます。
説明文は、多くの場合OTAが用意したフォーマットに沿って入力する形になります。魅力的なタイトルを設定し、商品の概要を分かりやすく伝える文、さらに詳細説明文と段階的に情報を入力するのが一般的です。最後に、料金と在庫(販売可能な部屋数や予約枠)を設定します。曜日や季節によって料金を変動させることも可能です。すべての情報の入力が終わったら、公開前にプレビュー機能で顧客側の見え方を確認しましょう。
4-4. ステップ4:サイトコントローラーの導入検討(宿泊・体験事業者向け)
複数のOTAを利用して販売する宿泊施設や体験事業者にとって、在庫管理は非常に複雑かつ重要な課題です。例えば、全10室の施設でAというOTAから1室予約が入ると、手作業でBやCのOTAの在庫も9室に調整しなければ、予約が重複する「ダブルブッキング」が起きる恐れがあります。この問題を防ぐのが「サイトコントローラー」というシステムです。
サイトコントローラーでは、連携している複数OTAの在庫や料金を一元管理できるため、どこかのOTAで予約が入ると他のOTAの在庫も自動で減る仕組みです。これにより、ダブルブッキングのリスクを大幅に軽減できます。また、料金変更も一度の操作で全OTAに反映されるため、業務効率が飛躍的にアップします。月額料金が発生しますが、複数OTAを本格的に運用する場合は導入を強く推奨します。
4-5. ステップ5:販売開始と初期の運用
すべての情報登録が完了し、OTA側の承認を得たらいよいよ販売を開始します。公開直後は、ご自身のスマートフォンなどを使い、商品ページが正しく表示されているか、予約手続きに問題がないかを確認しましょう。予約が入ると、管理画面に通知が届くほか、登録したメールアドレスへも連絡が届くことが一般的です。通知を見逃さないよう、確認体制を整えておきましょう。
初めての予約が入ったら、心を込めてお客様をお迎えください。インバウンド集客はここからが本番です。お客様に素晴らしい体験を提供することで、良い口コミが生まれ、それが次の予約につながる好循環を作り出します。初期の段階ではお客様とのコミュニケーションを丁寧に行い、サービスの改善点に関するフィードバックを積極的に集めることも大切です。ここでの成功体験が、今後のOTA運用を支える大きな力となります。
5. 失敗しないためのOTA運用術とトラブルシューティング

OTAへの掲載を開始すること自体はゴールではなく、インバウンド集客のスタート地点に過ぎません。掲載後は、継続的な運用の改善と、起こり得るトラブルへの備えが求められます。ここでは、OTAを最大限に活用して安定した集客を実現するための運用ノウハウと、よくあるトラブルへの対処法について解説します。これらの知識が、長期的な成功を支える土台となるでしょう。
5-1. 口コミ(レビュー)を味方にする戦略
OTAにおいて、口コミは予約率に大きな影響を与える重要な要素のひとつです。多くの旅行者は予約を決める前に他の利用者のレビューを参考にします。高評価の口コミが多ければ多いほど、商品はOTAの検索結果で上位に表示されやすくなり、顧客からの信頼も向上します。口コミは、無料で得られる最良の広告媒体とも言えます。
良質な口コミを増やすには、まず質の高いサービスを提供することが不可欠です。その上で、お客様が満足された際には、チェックアウト時などに「よろしければ、OTAにレビューを書いていただけるとありがたいです」と丁寧にお願いしてみましょう。また、施設内にQRコードを掲示し、レビューページへ直接アクセスできるようにするのも効果的です。反対に、ネガティブな口コミが投稿されることもありますが、その際は感情的にならず、まずは誠実に謝罪し、具体的な改善策を提示することが大切です。その対応が、他の潜在顧客に安心感を与えます。
5-2. 予約を増やすための価格・在庫管理
OTAの運用は単に商品を掲載するだけでは十分とは言えません。需要変動に応じて価格や在庫を戦略的に管理し、収益の最大化を図ることが重要です。この手法は「レベニューマネジメント」と呼ばれ、特に宿泊業界では常識化しています。例えば、近隣で大規模イベントが開催される日や桜や紅葉のシーズンといった繁忙期には料金を上げる一方、閑散期には料金を下げて集客を促すといった調整が行われます。
多くのOTAでは、週末料金や連泊割引、直前割引、早期割引など様々なプロモーション機能が提供されています。これらを活用し、「お得感」を演出することも予約増に効果的です。最初は難しく感じるかもしれませんが、まずは競合施設の価格動向を定期的に観察することから始めてみましょう。データを積み重ねることで、自社に最適な価格設定パターンが見えてくるはずです。
5-3. よくあるトラブルとその対処法
細心の注意を払っても、インバウンドのお客様との間で予期せぬトラブルが発生することがあります。典型的なトラブルと対処法を事前に把握しておくことで、いざという時に冷静に対応できるようになります。最も頻発するのは先述の「ダブルブッキング」です。もし発生した場合は、まずお客様に丁寧に謝罪し、責任をもって同等以上の代替施設を探して提案することが重要です。同時に、利用したOTAのサポートセンターに速やかに連絡し、指示を仰ぎましょう。
次に多いのは「ノーショー(無断キャンセル)」です。これを防ぐためには、予約時にクレジットカード情報の入力を必須にする料金プランを設けたり、宿泊日が近づいた際に確認メッセージを送る(リコンファーム)といった対策が有効です。また、言葉の壁による「コミュニケーションのズレ」も起こり得ます。複雑な説明は避け、翻訳アプリを活用しながら、分かりやすい単語やジェスチャーを用いて伝えることを心がけるだけで、多くの誤解は防止できます。
6. OTAの先へ:持続的なインバウンド集客を目指して
OTAはインバウンド集客において極めて強力なツールですが、それに過度に依存するのではなく、OTAを入口としてより持続可能で堅牢な集客基盤を作り上げる視点が重要です。ここでは、OTA運用によって得られた資産を活用し、さらにビジネスを発展させるための次の段階について考察します。OTAは世界と繋がるための最初の扉にすぎません。
6-1. OTAのデータを活かしたマーケティング戦略
多くのインバウンドOTAは、事業者向けに豊富な分析データを提供しています。管理画面からは予約者の国籍、予約のリードタイム、平均滞在日数、利用デバイス(PCやスマホ)など、極めて価値のある情報を取得できます。これらのデータを単に眺めるだけでなく、次の戦略策定に活用することが不可欠です。
たとえば、「台湾からの予約が全体の30%を占めている」とわかった場合、台湾の旅行者に響く新たな体験型プランを開発したり、繁体字対応の情報発信を強化したりといった具体的な施策に結びつけられます。「予約が直前に集中している」という傾向があれば、直前割引プランの強化も有効でしょう。このようにデータを元に仮説を立て、実証を繰り返すことでマーケティングの精度は確実に高まっていきます。
6-2. 自社サイト予約への誘導とファン獲得
OTAは新規顧客獲得のための「出会いの場」として優れていますが、10%〜25%程度の販売手数料がかかることも避けられません。一度OTAを介して利用し満足したお客様には、次回は手数料不要の自社公式サイトから予約してもらうのが理想的です。リピーター育成に向けた施策が求められます。
たとえば、施設内に「公式サイトからの予約がお得です」と案内するカードを設置したり、チェックアウト時に次回来館で使える割引コードを配布したりする方法があります。また、お客様の同意を得たうえでメールアドレスを登録してもらい、季節の情報やお得な案内を送るメールマガジンも効果的です。SNSアカウントのフォローを促し、継続的に交流を深めることもファン作りに繋がります。リピーターの存在はインバウンド市場の安定に欠かせません。
6-3. 変化し続けるインバウンド市場への適応
インバウンド市場やOTAの環境は常に変化しています。新たなOTAの登場、旅行者の嗜好の変化、国際情勢による人気旅行先の変動など、一度成功した手法が長期的に通用するとは限りません。だからこそ、最新の情報を収集し、継続的に学び続ける姿勢が最も重要です。
業界専門のニュースサイトを定期的にチェックしたり、自治体や観光協会主催のセミナーに参加したりすることも有効です。今回ご紹介したOTAに加え、特定の国や趣味に特化したニッチなOTAも多数存在します。事業の成長にあわせて、新たなパートナーシップの検討が必要となることもあるでしょう。本記事が、皆様が世界中のお客様と繋がるための確かな第一歩となることを心より願っています。