訪日韓国人を呼び込みたいものの、どのような旅行者が多く、何から施策を考えればよいのか分からない。商業施設、宿泊施設、体験事業、小売店などでは、そうした悩みも少なくありません。
韓国は、日本にとって最大級の訪日市場のひとつです。一方で、他の国・地域と比べると滞在期間が短く、個人旅行やリピーターの割合が高いという特徴があります。
そのため、単に「韓国語に対応する」「韓国で人気のSNSを使う」と施策から考えるのではなく、どのような韓国人旅行者に、どのタイミングで、何を選んでもらいたいのかを整理することが重要です。
本記事では、2025年の年間データと2026年の最新動向をもとに、訪日韓国人の旅行傾向や消費の特徴、国内事業者が施策を考える際のポイントを整理します。
1. 2026年(令和8年)時点で見る訪日韓国人市場の大きさ

1-1. 年間約946万人が訪れる、日本最大級の訪日市場
2025年の訪日外客数は4,268万人を超え、年間で過去最高を記録しました。そのうち韓国からの訪日客は約946万人で、訪日市場のなかでも特に大きな規模を持つ市場です。
2026年に入ってからも多くの旅行者が訪れており、1〜8月の訪日韓国人数は約742万人となっています。
月別では、2026年7月が89万4,700人、8月が85万500人でした。8月は前年同月比28.7%増となっており、引き続き大きな訪日需要がみられます。
韓国市場を検討する際は、単に「訪日客数が多い市場」と捉えるだけでなく、後述する滞在期間や旅行形態、訪日回数まで含めて特徴を理解することが重要です。
1-2. 1人当たり旅行支出は約10.5万円
2025年の韓国人一般客1人当たり旅行支出は105,058円、韓国市場全体の旅行消費額は約9,906億円でした。1人当たりの旅行支出は、欧米豪など長期滞在が多い市場と比べると低い水準です。
費目別では、宿泊費が36,391円、買物代が25,639円、娯楽等サービス費が5,427円となっています。
韓国市場では、1回あたりの旅行単価だけを見るのではなく、訪日客数の多さや、繰り返し日本を訪れる旅行者が多いことも含めて市場を捉える必要があります。
2. 訪日韓国人の旅行傾向は「短期・個人旅行・高リピート」
韓国市場の特徴を理解するうえで、特に押さえておきたいのが「滞在期間」「旅行形態」「訪日回数」の3点です。
2-1. 観光・レジャー目的では平均3.4泊。短期滞在の割合が高い
韓国人一般客の平均泊数は4.0泊です。観光・レジャー目的に限ると平均3.4泊となっています。
さらに滞在日数別に見ると、観光・レジャー目的の訪日韓国人では、3日間以内の滞在が23.2%を占めています。
他の主要市場と比較しても、韓国は3日以内の短期滞在の割合が高いことが分かります。

たとえば台湾では3日間以内が3.3%、香港では3.8%であるのに対し、韓国では23.2%です。
この違いからも、韓国市場では長期旅行だけを前提にせず、比較的短い滞在のなかで旅行先や訪問先を選ぶ人が一定数いることを前提に考える必要があります。
施設や体験を訴求する場合も、魅力そのものに加えて、所要時間やアクセス、予約方法など、旅行者が自分の旅程に組み込めるか判断するための情報が重要になります。
2-2. 個別手配が90.9%。旅行者自身が行き先を選ぶ
訪日韓国人の旅行形態は、個別手配が90.9%、団体ツアー参加が6.6%、個人旅行パッケージ利用が2.5%となっています。つまり、訪日韓国人の多くは、団体旅行ではなく、自分自身で航空券や宿泊先、訪問先などを選んで旅行しています。
これは、国内事業者にとっても重要な特徴です。
旅行会社の商品に組み込まれることだけが接点ではなく、検索やSNS、予約サイト、公式サイトなどを通じて、旅行者自身に見つけてもらい、比較・検討してもらう機会があります。
そのため、まず確認したいのは、
- どこにあるのか
- いつ利用できるのか
- 料金はいくらか
- 予約が必要か
- どれくらい時間がかかるのか
- どのようにアクセスするのか
といった、旅行者が判断するための基本情報です。
すべてを一度に多言語化するのではなく、まずは旅行者が自社を選ぶ際に不足している情報がないかを確認することが第一歩になります。
2-3. 8割以上が訪日リピーター。韓国人という括りだけでは粗い
韓国人一般客の来訪回数を見ると、訪日1回目は16.3%です。つまり、2回目以上の訪日客が8割を超えており、10回目以上の旅行者も18.0%を占めています。
韓国市場は、すでに多くの人が日本旅行を経験している成熟市場といえます。
ただし、ここで注意したいのは、「リピーターが多い=全員が同じニーズを持っている」わけではないことです。
初めて日本を訪れる人と、10回以上訪れている人では、知っている場所や必要とする情報が異なります。また、同じ韓国人旅行者でも、年代、同行者、旅行目的、訪問エリアなどによって、旅の過ごし方は変わります。
韓国市場をターゲットにする際は、「韓国人に何を訴求するか」だけではなく、「どのような訪日経験を持つ、どのような旅行者に選んでもらいたいのか」まで具体化して考えることが重要です。
3. 訪日韓国人の消費から見える特徴

3-1. 菓子類の購入率が高く、酒類・医薬品・食品にも消費が広がる
2025年の訪日韓国人の1人当たり旅行支出は105,058円で、そのうち買物代は25,639円でした。購入品目を見ると、韓国人旅行者では「菓子類」の購入率が83.4%と特に高くなっています。
そのほか、
- 酒類:37.3%
- 医薬品:37.1%
- その他食料品・飲料・たばこ:33.9%
- 衣類:28.5%
など、幅広いカテゴリーの商品が購入されています。
特に菓子類は、訪日韓国人の多くが購入しているカテゴリーです。一方で、購入率が高い商品カテゴリーだからといって、自社の商品が自動的に選ばれるわけではありません。
同じ菓子や食品のなかにも、多くの商品やブランドがあります。そのため事業者側では、単に「韓国人に人気の商品」を揃えるのではなく、自社の商品が旅行者にとってどのような理由で選ばれるのかを整理する必要があります。
3-2. 商品そのものだけでなく、選ぶための情報を整える
商品を購入する際には、価格や見た目だけでなく、
- 地域限定なのか
- 日本でしか買えないのか
- どのような商品なのか
- 内容量はどれくらいか
- 賞味期限はどのくらいか
- どのように使う商品なのか
といった情報も判断材料になります。
日本人には説明しなくても伝わる商品でも、訪日客には商品そのものが知られていないことがあります。
そのため、すべての商品に韓国語POPを付けることから始めるのではなく、まずは自社で訪日客によく購入されている商品や、今後重点的に訴求したい商品を選び、購入を判断するために必要な情報が十分に伝わっているかを確認するとよいでしょう。
店頭だけでなく、WebサイトやSNSなど旅マエの情報接点で商品について知ってもらうこともできます。旅行中に偶然見つけてもらうだけでなく、訪日前から候補に入れてもらえる状態をつくることも、施策の一つです。
4. データから考える韓国市場向け施策の3つのポイント
ここまでのデータから、韓国市場では「短期滞在」「個人旅行」「高いリピーター率」という特徴が見えてきます。
これらを施策に落とし込む際は、韓国向けだからと特定の媒体や施策から考えるのではなく、まず旅行者の状況を整理することが重要です。
4-1. 「韓国人」だけでなく、訪日経験まで分けて考える
訪日韓国人の8割以上がリピーターである以上、「韓国人」という国籍だけでターゲットを設定すると、旅行者像としてはまだ粗いといえます。
たとえば、
- 初めて日本を訪れる人
- 2〜3回目の人
- 10回以上訪れている人
では、知っている地域や施設、必要としている情報が異なる可能性があります。
また、同じ訪日回数でも、一人旅、友人旅行、カップル、家族旅行などによって、選ばれる商品や体験は変わります。
まずは、「誰に来てもらいたいのか」を、国籍だけでなく、
- 訪日経験
- 年代
- 同行者
- 旅行目的
- 訪問エリア
まで含めて整理してみましょう。
ターゲットを具体化することで、その人にとって自社を選ぶ理由も考えやすくなります。
4-2. 短期・個人旅行でも判断しやすい情報を整える
観光・レジャー目的の韓国人旅行者は平均3.4泊で、個別手配が90.9%を占めています。
この2つの特徴を踏まえると、旅行者自身が自社を見つけた際に、旅程に組み込めるかどうかを判断できる情報を整えておくことが重要です。
たとえば、
- 所要時間
- 営業時間
- アクセス
- 予約の必要性
- 料金
- 定休日
- 当日利用の可否
などです。
特に体験施設や観光施設の場合は、「どんな体験ができるか」だけでなく、「旅行の中でどのくらい時間を使うのか」まで分かるようにしておくと、旅程への組み込みを判断しやすくなります。
短期滞在だからこそ「短時間メニューを作ればよい」と単純化するのではなく、限られた旅行日程のなかで選択肢に入るために、必要な判断材料を不足なく示すことが大切です。
4-3. NAVER・Google・SNSなど複数の情報接点を意識する
韓国ではNAVERが主要な検索サービスのひとつとして利用されています。
一方で、日本旅行に関する情報収集がNAVERだけで完結するわけではなく、GoogleやInstagram、動画コンテンツ、予約サイトなど、複数の情報接点が使われます。
そのため、「韓国市場ならNAVERだけ対策すればよい」と考えるのではなく、ターゲットとなる旅行者がどの段階で、どのような情報を探しているのかを考えて接点を選ぶことが重要です。
まず確認したいのは、自社や施設名を韓国語で検索した際に、どのような情報が表示されるかです。施設名、地名、商品名などの表記が媒体ごとに異なる場合は、検索する旅行者が迷わないよう整理します。
そのうえで、公式サイト、検索、SNS、予約サイトなど、それぞれの情報が最新の状態になっているか確認しましょう。
重要なのは特定の媒体を使うことそのものではなく、旅行者が自社を知り、理解し、最終的に選ぶまでに必要な情報を届けることです。
5. まとめ|韓国市場は「人数」だけでなく、旅行の仕方を見る

2025年には約946万人の韓国人旅行者が日本を訪れました。2026年に入ってからも訪日客数は高い水準で推移しており、1〜8月だけで約742万人が訪れています。
一方、旅行者の特徴を見ると、
- 観光・レジャー目的の平均泊数は3.4泊
- 3日以内の滞在が23.2%
- 個別手配が90.9%
- 2回目以上の訪日客が8割超
となっています。
つまり韓国市場は、単に「日本に近く、訪日客数が多い市場」ではありません。
短期間で日本を訪れ、自分で旅行を組み立て、何度も日本を訪れる人が多い市場という特徴があります。
だからこそ、韓国向けのインバウンド施策を考える際は、
- 誰に:どのような韓国人旅行者に来てほしいのか
- どのタイミングで:旅行計画のどの段階で選んでもらいたいのか
- 何を伝えるか:選ぶためにどのような情報が必要なのか
を整理することが重要です。
「韓国向けだからNAVERを使う」「韓国語POPを作る」と施策から始めるのではなく、誰のどのような意思決定を後押ししたいのかを考えたうえで、必要な情報や接点を選ぶことが、韓国市場に取り組む第一歩になります。
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