訪日インバウンドに取り組みたいものの、最初に何を整えればよいのか分からない。商業施設、宿泊施設、体験事業者、小売店の現場では、そうした声をよく聞きます。
なかでも台湾市場は、訪日経験が豊富で、買い物や宿泊、地域体験への関心も高い重要市場です。ただし「台湾人は親日だから来てくれる」と考えるだけでは、2026年(令和8年)時点の競争環境では不十分です。
本記事では、台湾人の旅行傾向を最新データで押さえながら、国内事業者が明日から進められる受入整備と集客施策を整理します。
1. 訪日台湾人の旅行傾向を2026年時点のデータで押さえる

1-1. 訪日台湾人は大きな送客規模を持つ成熟市場です
2025年の台湾からの訪日旅行者数は約676万人で、過去最高を記録しました。さらに、訪日台湾人の消費額は1兆2,110億円で、中国に次ぐ第2位の市場です。
2026年7月の訪日外客数では、台湾が単月で初めて70万人を超え、単月過去最高を記録しました。夏休みや連休だけでなく、年間を通じて安定的に狙える市場だといえます。
商業施設や小売店にとっては、台湾人訪日客は単なる通過客ではありません。訪日経験が多いぶん、自分で行き先を選び、買う理由を比較し、満足すれば再来訪や口コミにつながる顧客です。
1-2. 台湾人リピーターは約9割で、初訪日向け施策だけでは足りません
2025年の訪日台湾人は、来訪回数が1回目の人が12.1%、2回目以上が87.9%でした。10回目以上の層も26.4%に達しており、台湾人リピーターが市場の中心です。
これは、東京、大阪、京都、北海道といった台湾人に人気の観光地だけを案内すればよい、という意味ではありません。むしろ定番を経験した人ほど、地域限定商品、季節イベント、日常に近い体験を探します。
初めての訪日客には分かりやすさが必要ですが、リピーターには「前回と違う発見」が必要です。施設側は、定番商品の説明に加え、限定性や背景を伝える準備をしておくことが重要です。
1-3. 個人手配が中心なので、事業者自身の情報発信が効きます
訪日台湾人の旅行形態は、個別手配が77.5%、団体ツアーが17.8%でした。旅行会社に任せるより、自分で航空券、宿泊、訪問先を組み合わせる人が中心です。
この傾向は、国内事業者にとってチャンスです。大規模な広告を出さなくても、繁体字の施設ページ、Googleビジネスプロフィール、SNS投稿、予約導線を整えれば、旅行計画中の台湾人に見つけてもらえます。
一方で、情報が古い、営業時間が違う、予約方法が日本語だけ、といった状態は離脱につながります。個人旅行者は比較が早いため、基本情報の整備が集客の第一歩です。
2. 訪日台湾人の消費から見える商機
2-1. 買物支出は約6万円。特に菓子類・衣類・医薬品の購入率が高い
2025年の訪日台湾人の一般客1人当たり旅行支出は184,413円でした。内訳では買物代が60,079円で32.6%、宿泊費が58,569円で31.8%を占めています。
購入品目を見ると、台湾からの訪日客では「菓子類」の購入率が79.0%と特に高く、次いで「衣類」52.6%、「医薬品」43.9%、「その他食料品・飲料・たばこ」41.8%、「化粧品・香水」35.0%となっています。
購入率だけでなく購入者単価を見ると、「靴・かばん・革製品」は30,626円、「衣類」は22,504円、「化粧品・香水」は19,046円となっています。
つまり台湾市場の買物消費は、菓子など購入者の裾野が広い商品だけでなく、ファッションや化粧品など比較的購入単価の高いカテゴリーにも広がっています。
2-2. 「何を買うか」だけでなく、商品情報の伝え方が重要になる
訪日台湾人の購入品を見ると、菓子類をはじめ、衣類、医薬品、化粧品・香水など、幅広いカテゴリーで買い物が行われています。
ただし、購入率が高いカテゴリーの商品を扱っているからといって、それだけで訪日客に選ばれるとは限りません。旅行中は限られた時間のなかで多くの商品や店舗を比較するため、「なぜこの商品を選ぶのか」を判断できる情報を、分かりやすく伝えることも重要です。
たとえば、地域限定・季節限定といった商品の特徴、用途や使い方、内容量、賞味期限など、日本人には説明がなくても伝わる情報が、訪日客には購入を判断するうえで必要になることがあります。
すべての商品情報を一度に多言語化する必要はありません。まずは自社で訪日客によく購入されている商品や、今後訴求したい商品から優先して、購入時に迷いやすい情報が不足していないかを確認するとよいでしょう。
また、店頭だけでなく、SNSやWebサイトなど旅マエの情報接点でも商品の特徴を伝えておくことで、旅行中に初めて知ってもらうのではなく、訪日前から「日本に行ったら買いたい商品」として検討してもらうこともできます。
3. データから考える、台湾市場向け施策の3つのポイント
ここまで見てきたように、台湾市場には「訪日客数が多い」という規模だけでなく、リピーター比率の高さ、個人手配の多さ、買い物消費の大きさといった特徴があります。
台湾向けの施策を考える際は、こうした特徴を「台湾人は○○が好き」と一括りにするのではなく、自社の商品・サービスを選んでもらうために何が必要かを考える材料として活用することが重要です。

3-1. 「台湾人」だけで括らず、訪日経験の違いまで考える
2025年の訪日台湾人のうち、2回目以上の訪日客は87.9%、10回目以上も26.4%を占めています。
つまり、同じ台湾からの旅行者でも、初めて日本を訪れる人と、すでに何度も訪れている人が混在しています。「台湾人」という国・地域だけでターゲットを設定すると、こうした旅行経験の違いを捉えきれません。
たとえば初訪日であれば、アクセス方法や利用方法など、安心して訪問するための基本情報が重要になるでしょう。一方、訪日経験を重ねた旅行者に対しては、それだけでは自社を選ぶ理由として十分ではない可能性があります。
台湾市場を考える際は、国・地域だけでなく、「どのような旅行者に、今回の旅行でなぜ自社を選んでもらいたいのか」まで具体化することが、施策を考える第一歩になります。
3-2. 購入されている商品だけでなく、「選ぶ理由」を伝える
訪日台湾人の買い物では、菓子類をはじめ、衣類、医薬品、化粧品・香水など、さまざまなカテゴリーの商品が購入されています。
ただし、「台湾人によく購入されているカテゴリーだから」という理由だけで、自社の商品が選ばれるわけではありません。同じカテゴリーのなかにも、多くの商品やブランドがあります。
そこで重要になるのが、商品の特徴だけではなく、「なぜ旅行者がその商品を選ぶのか」を考え、判断に必要な情報を伝えることです。
地域限定・季節限定といった特徴、商品の背景、用途や使い方、内容量、賞味期限など、自社の商品を選ぶ際に必要になる情報を整理してみましょう。
また、こうした情報は店頭だけでなく、SNSやWebサイトなど旅マエの接点でも発信できます。旅行中に初めて商品を知ってもらうだけでなく、訪日前から「日本に行ったら見てみたい」「買ってみたい」と思ってもらえる状態をつくることも、選択肢の一つです。
3-3. 個人旅行者が自分で判断できる情報を整える
訪日台湾人の77.5%が個別手配で旅行していることも、事業者にとって重要なポイントです。
個人旅行では、旅行者自身が宿泊先や訪問先、体験、買い物先などの情報を収集し、旅程を組み立てます。そのため、旅行者が自社を見つけたときに、「行けるのか」「利用できるのか」「自分に合っているのか」を判断できる情報が揃っていることが重要になります。
まず確認したいのは、営業時間、アクセス、料金、予約方法、支払い方法、休業日、キャンセル条件などの基本情報です。台湾市場に向けて発信する場合は、こうした優先度の高い情報から繁体字で整備するとよいでしょう。
すべてのページや情報を一度に多言語化する必要はありません。まずは自社の商品・サービスを検討する際に旅行者が確認したい情報を洗い出し、「情報がないために判断できない状態」を減らすことから始めるのが現実的です。
4. まとめ|台湾市場は「国」だけでなく、旅行者の違いを見て考える
2025年には台湾から約676万人が日本を訪れ、その約9割が訪日リピーターでした。また、個別手配が77.5%を占め、1人当たり旅行支出は約18.4万円、そのうち買物代は約6万円となっています。
こうしたデータから見えてくるのは、台湾市場を単に「訪日客数の多い市場」として捉えるだけでは不十分だということです。
同じ台湾からの旅行者でも、訪日経験や旅行の目的、同行者、検討している商品・体験によって、必要とする情報や選ぶ理由は異なります。
台湾向けの施策を考える際は、まず、
- 誰に:どのような旅行者に来てほしいのか
- 何を:自社の何を選んでもらいたいのか
- なぜ:旅行者にとって、それを選ぶ理由は何か
- どの段階で:訪日前・旅行中のどこで情報を届けるのか
を整理してみましょう。
「台湾向けだからSNSを始める」「繁体字に翻訳する」と施策から考えるのではなく、どの旅行者の、どのような判断を後押ししたいのかを整理したうえで、必要な情報や施策を選ぶことが重要です。
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